矢川緑地もまた、東京都の名湧水57選のひとつ。緑地の中には湧水池がありますが、さらにいくつもの湧水ポイントから湧き出す水を集めて流れだすのが、幅2m程、長さ1・5キロの矢川です。 矢川は緑地を出て南に向かって流れ、第六小学校と矢川いこいの広場を抜けて甲州街道の下をくぐり、さらに滝野川学園の先の「矢川おんだし」で、多摩川水系の府中用水と合流して谷保の農地をうるおしていきます。 その昔は、途中にワサビ田があったり生糸生産に使う水車が回っていたりと、里山の暮らしを支えていた矢川。夏にはたくさんのホタルも飛んでいたそうです。
矢川緑地内は、矢川緑地ボランティアの方々のお世話で自然が保たれており、夏の湿地に丈の高いヨシなどが繁茂する景色は、それは見事です。シマアメンボ、ツバメ、オナガ、カルガモにコサギは緑地の常連ですし、6月にはカッコウの声が聞こえることもあります。 また澄み切った流れの矢川の周辺には貴重な湿地性の植物が数多く、清流にしか見られないナガエミクリ、ピンク色のミゾソバなどが可憐な花を咲かせています。矢川の流れに沿って散策路や木道が整備されていますので、水辺を眺めながらゆっくりお散歩をどうぞ。
【取材・執筆】 田中えり子【写真】 横坂泰介【参考】 『里山ガイドマップ』(くにたち郷土文化館発行)
JR南武線矢川駅から徒歩8分