国立名所 「府中用水」

府中用水 国立の青柳から府中の是政まで、地域をうるおしている農業用水路。水辺ではトンボやメダカ、コサギにも会えますよ。 江戸初期から続く農業用水府中用水取水門府中用水は、江戸時代の初期に、多摩川の古い流路を利用して開削された農業用水です。当時は「七ヵ村用水」と呼ばれ、府中宿の本町、番場町、新宿の三つと、是政村、上谷保村、下谷保村、青柳村の4つを合わせて7つの村が利用していました。 上流の谷保界隈と下流の府中ではたびたび「水争い」も起きたほど、稲作にとって水は欠かせない大切なものでした。 1900年(明治33年)ごろ、たびたび氾濫をくりかえす多摩川から安定した水量を確保するため、青柳の先に「取水門」が設置されました。この取水門は現在も使われており、多摩川流域で最大、最古の門として貴重な歴史遺産となっています。
農地をうるおし、暮らしを支えてコサギ現在の府中用水は全長6キロ、多摩川左岸の日野橋下流から取水され、途中いくつもの分流となり、青柳崖線の豊富な湧水ともまじりあいながら網目のように農地を流れ、府中市是政付近で再び多摩川にそそいでいます。 毎年5月20日ごろには水門が開かれ、再び水門が閉じられるのはコメの収穫期9月20日ごろ。稲作のほか、特産として有名な多摩川梨や谷保ナスが収穫できるのも、豊富な水があってこそ。 さらに用水の水辺にはアブラハヤ、オイカワなどの魚、カゲロウの幼虫、ハグロトンボなどの水生昆虫も多く、昆虫や小魚を狙って飛来するコサギやシラサギなどを間近に見ることができます。 府中市に入ると暗渠になり、上は緑道になりますが、国立ではまだ多くのところで水辺の風景を楽しめるのがうれしいですね。
東京都で唯一「全国疏水百選」の仲間入り府中用水そうした豊かな生態系を維持している府中用水は、2006年農水省の「全国疏水百選」に東京都で唯一選ばれました。 国立でも都市化の進行で農地が減少し、農業者の高齢化も進んでいます。今後は農業のためだけではなく、一年を通して水が流れる市民の憩いの水辺、都内でも珍しい里山の自然を楽しめる環境として、府中用水は見直したいものです。
【取材・執筆】 田中えり子 【写真】 くにたち一芸塾写真クラブ、田中えり子、くにたち総合ポータルサイト事業協議会 【参考】 『府中用水』、『里山だいすきガイドマップ』(くにたち郷土文化館発行)
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