現在の府中用水は全長6キロ、多摩川左岸の日野橋下流から取水され、途中いくつもの分流となり、青柳崖線の豊富な湧水ともまじりあいながら網目のように農地を流れ、府中市是政付近で再び多摩川にそそいでいます。 毎年5月20日ごろには水門が開かれ、再び水門が閉じられるのはコメの収穫期9月20日ごろ。稲作のほか、特産として有名な多摩川梨や谷保ナスが収穫できるのも、豊富な水があってこそ。 さらに用水の水辺にはアブラハヤ、オイカワなどの魚、カゲロウの幼虫、ハグロトンボなどの水生昆虫も多く、昆虫や小魚を狙って飛来するコサギやシラサギなどを間近に見ることができます。 府中市に入ると暗渠になり、上は緑道になりますが、国立ではまだ多くのところで水辺の風景を楽しめるのがうれしいですね。
そうした豊かな生態系を維持している府中用水は、2006年農水省の「全国疏水百選」に東京都で唯一選ばれました。 国立でも都市化の進行で農地が減少し、農業者の高齢化も進んでいます。今後は農業のためだけではなく、一年を通して水が流れる市民の憩いの水辺、都内でも珍しい里山の自然を楽しめる環境として、府中用水は見直したいものです。
【取材・執筆】 田中えり子
【写真】 くにたち一芸塾写真クラブ、田中えり子、くにたち総合ポータルサイト事業協議会
【参考】 『府中用水』、『里山だいすきガイドマップ』(くにたち郷土文化館発行)
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