【6月下旬】あじさいまつり
重くたれ込める梅雨空の下、色鮮やかに咲き誇るあじさいは、私たちの気持ちまで明るくしてくれそう。谷保天満宮境内弁天池周辺には約30種、1,000株以上のあじさいが咲くあじさい園があり、6月末にはあじさいまつりが開催されます。ここにいたる経緯は、人々のつながり広がり、絆を感じさせるエピソードで彩られていました。
あじさい園があるのは谷保天満宮境内の弁天池近くの斜面。「東京名湧水57選」にも選ばれた「常盤の清水」や弁天さま(厳島神社)のお社もあり、遊歩道も整備されていて格好の散策路。
そんな素敵な空間も、以前は荒れ放題で弁天さまには賽銭泥棒が頻出したりするような所だったとか。そんな状況に胸を痛めていた関政市さん(あじさい植えよう会会長)が一念発起。
「とにかく汚かったですよ。荒れている所はどんどん悪くなっていくものなんですね。囲いをしてもこわしてまで賽銭を盗んでいく・・・。それで2003年、谷保天満宮の社務所を新しくするというときに、弁天さまもきれいにしようと思いたったのです。谷保天さん同様に、弁天さまの氏子でもあるのでね」(関さん)
関さんは1日おきに現場に通ったといいます。ほかの氏子さんたちも一緒になって、お社を新しくし、斜面の整地・清掃をし、遊歩道整備もみなさんの手で行いました。当時の写真を見ると、これだけでも十分景観はよくなっているのですが、
「せっかく1,000㎡もあるんだから、何か花を植えたらどうだろう」
と、目標をもうひとつ上に掲げました。
国立で花といえば、梅、桜。けれども、梅は谷保天満宮に立派な梅園があり、桜も大学通り、さくら通りがすでに有名です。
そのとき関さんは懇意にしていた笹川良一先生の
「あじさいは春に芽をふいて、梅雨時にどんぶりほどもある花を咲かせ長い間楽しませてくれる。咲き終わった花は、花びらをまき散らすことなく自分の足元に落ちて肥料となる。秋には葉が落ちて自分が越冬するための毛布となって。また春がめぐりきて・・・こんな人生をおくれたら・・・」
という言葉を思い出したのだそうです。
そこで早速30株を植樹。あちこちに声がけをしていくうちに株を寄贈してくださる方が増えていきます。氏子仲間、お知り合い、果ては本業青果業の取引先からも株が届いたため、熊本や広島、宮城・・・と、各地のあじさいも仲間入りします。また、天満宮への参拝客からの奉納もあって、今では約780人、約30種、1,000株を超えるあじさいが色・形もとりどりに美しさを競っています。寄贈した方の名前が絵馬に書かれてあじさいにかけられていますが、中には大物演歌歌手・北島三郎さんからのものもあります。
地道に活動を進めながら、やがて「あじさい植えよう会」を結成。50人ほどの会員が植樹や水やり、手入れに携わっています。
花の見頃は6月上旬から7月下旬。
「ほかと比べると、より長い期間きれいに咲いていると思う」(同)
あじさいまつりは花の盛りの6月下旬に開催。日程は花の状態を見て5月上旬に決定されます。第3土曜日に設定されることがほとんど(年により第4土曜日)で、午後6時30分から8時30分まで天満宮境内で。ライトアップもされます。
無料でふるまわれる焼きそばや豚汁は、毎年好評で飛ぶようにさばけてしまうとか。
「植えよう会のメンバーが2~3日前から各自準備を始めて、当日みんな揃って現地でこしらえます。1,000人分という意識はないのですが、とにかくたくさん。材料を切って切って切って・・・焼き手も大変ですよね。気がつくと1,000個ずつ用意した容器がなくなっていて、作り手の分が残らなかったりしてね・・・(笑)」(関豊子さん)
大型トラックの荷台を変身させたステージでは天神太鼓やお囃子が披露されます。
「道具を載せてきて、しつらえて、終わったらとにかく積み込んでささっと撤収。合理的でしょ(笑)。片付けはあとでゆっくりやればいいんだから。バンドをやっているとか、発表の場を求めている人がいたら、出演歓迎だよ」(関さん)
自由な発想と手間ひまを惜しまない人々の力と気持ちが結集してのあじさい園作り、そしておまつり。空はくもっていても心がほのぼのしてきそうです。ちなみにこれまで、梅雨時にもかかわらず、降られたことはないそうですよ。
[協力] 関 政市さん(あじさい植えよう会会長)
[文責] 小山信子
[写真] くにたち一芸塾写真クラブ・くにたち総合ポータルサイト事業協議会