コミュニティ形成、地域交流にもひと役
当日会場では、正月飾りを積み上げたかまくらのまわりで、あるいは甘酒などをいただきながら篠竹の配付や点火の時を待つ市民が、時間とともに増えていきます。 そこかしこから、 「お久しぶり」 「お元気でしたか」 「今年もよろしく」 そんな声も聞こえてきます。普段なかなか会えない方との年に一度の邂逅の場にもなっているようで、そんななごやかな光景も見られます。 その始まりは1978年に遡ります。 当時の市内は大きく分けて、・歴史と伝統のある谷保地区(主に農業地域) ・昭和のはじめに開発され発展してきた国立駅前地区(主に商業地域) ・昭和40年代に開発された富士見台地区(団地など住宅地)の三つから成り立っていました。 各地域はそれぞれに特性・事情をもち、市内全体としてはまとまりにくいことも多々あったと聞きます。 このままでは街の発展に差し障りがあるのではないかと、懸念の声をあげた人々がいました。そこで、
・市内の三層構造の一元化と人々の中にある隔たり感の解消 ・地域コミュニティの形成、地域交流 ・伝承文化を伝えることで、国立で生まれ育った子どもたちの郷土愛・意識を高める ・ゴミとして出され心を痛めていた正月飾りのよい処分方法などを考えて、この大規模などんど焼きが発案されたのでした。
南養寺下の田んぼをお借りして「国立の自然と文化を守る会」が中心になり実行委員会を立ち上げ、国立で50年振りにどんど焼きが復活、実施されました。大勢の参加者により踏みしめられ固くなる田んぼの事に考慮して、2回目から会場を谷保第三公園に移し開催されるようになりました。
お手伝い歓迎
準備は毎年11月の実行委員集合から始まります。 主な仕事は、お飾りの集積場所の設置、かまくら作り、夜警、竹の確保、まゆ玉、甘酒などの調理から片付けまで。 「近年、一番大変なのは、まゆ玉をさす篠竹の確保。前日の朝7時半、30余人が出発してお願いしている竹林に向かいます。当日来てくださるみなさんにお渡ししたいので、3,000本が目標なのですが、なかなか難しい。もう市内ではなくて町田あたりまで探しに行きます。竹林は伐採も必要なので、地主さんはとても協力的でご好意で頂戴できるのですが、数mの長さともなると1年では育ちませんから、次の場所、竹林さがしも大事な仕事となります」(平成22年度事務局長・原田洋示さん) その竹はほとんど使い回しができず、毎年新しいものを使用するのだそうです。篠竹は傾斜地に育つため切り出すのも重労働、目標3,000本となると、そのご苦労は想像するに余りあります。一方、会場では造園業者の方たちが中心になって、かまくらを組み立てます。 「前日夜に積み上げたかまくらに火をつけられてしまったこと、当日大雪で石油を投入して焼いたこと、灰・煙・臭いのクレームなど、振り返るといろんなことがありました。20回目の記念のときは、中に入れるようにかまくらを組んで、4日間展示したこともありました。放火された翌年からは夜通しの警備をしていますし、ご理解いただくよう努めたり。おかげで一度も中止したことはありません。消防署や消防団の理解や協力も大きいです」(平成17年度事務局長・本間康彦さん)
当日の朝は早い。まだ暗い5時に集合して、まゆ玉作り開始です。上新粉240kgといいますから、ちょっと想像もつかない量ですね。 その他、みなさんにふるまう甘酒、ココア、コーヒー、実行委員の賄い食などが次々に調理されます。 「なにしろ何事も大量ですから、お手伝いの手はいくらでもほしいです。協賛団体に所属していない個人の方も大歓迎です。協賛団体のどなたかに声をかけていただければ、集合時間や場所をお知らせできますので、この催しをぜひとも一緒に作り上げていただきたいですね」(前出・原田さん) そして篠竹が配られ、11時半には谷保天満宮宮司さんによってお祓いがなされた後、点火されます。
ポスターのお話
さて最後は、みなさんにどんど焼きの開催をお知らせするポスターのお話。 この催し開催当時は、速水写真の店主、速水成夫さんが撮影した前年度の会場風景の写真を使い、デザインは広報担当の豊島義夫さんが担当して毎年新しいポスターを制作しておりました。現在のポスターは第3回の実行委員会で、高世英夫実行委員長より国立在住の日本南画院審査員の小柳種世さんに絵を描いてもらい大きめのポスターを作りたいとの意見が出され制作され、以後現在まで使われております。頼もしげな墨跡は、谷保天満宮の津戸最宮司によるもの。ぴったり息の合った画と書は、いかにも伝統行事にふさわしい風格をただよわせています。 絵・小柳種世。書・津戸最宮司。デザイン・豊島義夫。そして、20年以上も前に誕生した「くにたちわいん」。国立市内の酒屋さんの共同開発のワインで、国立オリジナル商品の先駆け的存在ですが、国立駅旧駅舎をやわらかなタッチで描いたラベルも小柳さんの作品です。 どんど焼きを以て新春を寿ぐ行事はひと区切り。間もなく訪れる大寒の中、自然界では音もなく、あたたかな春を迎える準備がすすんでいます。 [協力] 原田洋示さん・本間康彦さん(どんど焼き実行委員会)、津戸最さん(谷保天満宮宮司) [文責] 小山信子 [写真] くにたち一芸塾写真クラブ・どんど焼き実行委員会