国立の湧水のなかでも、もっとも豊富な湧水量を誇るのが、ママ下湧水群といわれるものです。ママとは崖のことを表す古代語で、昔からこの地方では崖線のことをママ、あるいはハケと呼んできました。ハケ下・ママ下には透明な清水があふれ、水が豊富な恵まれた土地であったために、人々が住み着き農耕をもとにした村落を形成してきたのです。 昭和初期まではいくつものワサビ田も見られたという湧水の水は、夏でもひんやりと冷たいため、農家では多摩川水系の府中用水とまぜて田畑に流す工夫をしました。ママ下湧水では今日でも農家の人が野菜を洗う風景が見られます。 湧水群は人の暮らしと自然がともに生きる里山として、大切にしていきたいもの。平成15年には東京都の名湧水57選のひとつに選定されました。
湧水の流れのなかにはナガエミクリなどの植物が見られ、またホトケドジョウ(環境省・絶滅危惧種)などの貴重な生き物も棲んでいます。近年、ママ下湧水群の上に大きな道路が建設されたために、かつてののんびりした面影はなくなりましたが、一部がママ下湧水公園として整備されました。公園内の西寄りの湧水ポイントには、地元の彫刻家である関敏氏による石碑が建てられています。 ママ下湧水公園からは、ハケ下の樹林に沿って散策道が続いています。くにたち郷土文化館を経由して、古民家のある城山公園から谷保天満宮まで、気持ちのよいハイキングコースが楽しめますよ。
【取材・執筆】 田中えり子【写真】 自然クラブ、くにたち総合ポータルサイト事業協議会
【参考】 『府中用水』、『里山だいすきガイドマップ』(くにたち郷土文化館発行)
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