

初めて来たのに懐かしい…。 そんな気持ちにさせる店 利久。
暖簾をくぐり扉を開けると「いらっしゃい!」という威勢の良い声に迎えられる。 「あれ?前に来た事あったっけ…?」そんな気持ちで カウンターに座ると隣席はご夫婦連れ。いかにも初心者の私に、ご主人が色々と話かけてくれる。 なんと!この日は2代目店主の息子さん(つまり3代目候補)がつい先頃ご誕生されたとの事で お店全体が喜びに包まれていた。 奥様が「うるさくてすみませんね…」と私に向けて苦笑い。素敵なご夫婦。 いいえとんでもない!むしろ楽しい、うれしいひとときでした。 利久は今から40年前、昭和51年に開店。 店主である鑓水さんの、料理人としての才能・酒屋勤めで培った味覚と知識・ 経営者としての第六勘と度胸・そして家族の協力、すべてが結集したお店です。
修行期間0日 ロケットスタート!
20代後半、鑓水さんは吉祥寺の酒屋さんに勤めていたが、お店が倒産し職を失った。 定職につかずふらふらすること1年余、ある日、たまたま遊びに行った知り合いの屋台のお店で 「焼き鳥屋をやらないか?」との誘いをうける。 聞けば、調理師が今日で退職するが後任が決まっておらず、このままでは閉店せざるを得ない状況だという。 鑓水さんはしばらく考え…「じゃあやるわ!」と即決。 その日が料理人としての人生の始まりとなった。 人に手料理を食べさせるのが好きだから…、と料理人を志す方が 多いのではないかと思うが、鑓水さんにおいては「一切興味がなかった!」と言う。 「1年間も遊んで暮らし、母ちゃんにもこれ以上心配かけられない!」という思いが動機となった。次の日から焼き鳥の仕込みや焼き方を教わり、屋台の店主としての日々がスタートした。
「利久」誕生のきっかけは物件との出会い
当時の自宅は東小金井にあり、毎日八王子まで車で通っていた。多摩蘭坂を通る通勤ルートの途中に、ある日、建売の店舗物件を見つけた。「自分のお店を持とうか!?」と突如閃き、不動産やさんに価格をたずねると予算が合わない…。高くて手が出ないと思った。 その頃は国立の駅前は閑散としており、飲食店はほとんどなかった。 そのため現東2丁目交差点付近のその界隈は商店街としてかなりにぎわい、 ラーメン屋さん、割烹料理屋他お店が立ち並び一様に繁盛していた。 予算はないがあきらめたくない…、鑓水さんは決断した。 借金をし、友人の店舗から備品等を譲り受ける等、周囲の協力を得て、 焼き鳥「利久」を開店する。ちょうど下のお嬢さんが誕生した年であった。 開店当時にしつらえたカウンターは今でもそのままの形で使っている。
気風の良さが仇となり?
さて念願のお店をオープンしたところ大繁盛! 次から次へとお客さんが入って来る。 鑓水さんの気風の良さに惹かれてか、少しやんちゃな筋のお客様がごひいきにして下さるようになった。 お店が満員で入れないと怒り、怒鳴りあい、収まらなければ外へ連れ出して 殴り合いのケンカとなる。「酒屋勤めで鍛えられ腕力があったので、負けやしないんだよ!」(笑)との事。ご主人がすったもんだの最中は奥様が1人でお店を守る。 他のお客様は案外気にしないで普通に飲んでいるそうだ。「気が気でないのでは?」と聞くと 「しょっ中だったから慣れちゃってたわね~」と朗らかに笑う奥様。 今では信じられないが、タクシーの運転手さんが仕事を終えて立ち寄り、 お酒を飲み、運転して帰っていく…そんな時代の事である。
逆境から念願成就まで
時は流れ、国立駅周辺の開発が進むにつれ、商店街が寂れていった。利久も 開店当初のいきおいはどこへやら、客足が減り、付近ではお店をたたむ仲間も多かった。 細々と営業を続け、ひまなお店は奥様に任せて ご主人は郵便局や運送屋さんのバイトをして稼いだ時期もあった。しかし、「このままではいけない!」と一念発起、ちょうどバブルがはじける直前の時期で お金を借り易く、店舗兼住居である建物の全面的な改築を決めた。 その決断は吉となる。リニューアルオープンにより、新規のお客様のご来店に繋がり、お店は連日にぎわいをみせるようになった。勢いにのり2014年3月に内装のみリニューアルを行ったところ更なる大繁盛! 税理士さんに驚かれる程の利益が出た月もあった。

ここでしか食べられない味を提供したい。
利久の名物の一つに「山形そば」がある。 「まさかこんな場所で本場山形のおそばが食べられるとは!?」と評判を呼び、 そばを目当てにいらっしゃるお客様もある。 ご夫妻は山形県のご出身。 地元山形には、この辺りではお目にかかれない美味しいものがたくさんある。 素朴な料理、田舎料理、昔食べた、懐かしい味、お母さんの味、 そんなお料理を伝えていきたい。 花の咲く前のナズナ、うわばみ草、日照草…、食材としては馴染みがなくても美味しいものはたくさんある。自ら育て収穫した素材、田舎から送ってもらう素材を使って、ここでしか食べられない 、という味を提供したいと思っている。


K1グランプリ優勝!いもこ汁
店の看板メニューであるいもこ汁は、昨年開催されたK1グランプリに於いて、見事優勝の栄冠を得た。 「その際の優勝インタビューでお店の所在地を宣伝するのを忘れて…今一つ集客効果に繋がらなかった!」と肩を落とし悔やんでおられるのは、二代目店主の明さん。 里芋の出まわる時期(9月~4月位の間)限定の味を、是非召し上がっていただきたいとの事。
皆さんの今後の夢、目標をおうかがいしてみた。

やきとり利久(りきゅう)

住所:〒186-0002 東京都国立市東2-13-31
電話番号:042-576-5454
営業時間 :【ディナー】17:00~24:00(L.O.00:00)
定休日:不定期
座席数:14席
駐車場:なし
ホームページ:http://kunitachi.shop-info.com/units/36236/cs015/
※おすすめメニューは時期によって異なります。