佐藤一夫
国立市長。谷保の300年続く旧家に生まれる。山口瞳のエッセイ「男性自身」の中にたびたび登場する「市役所のガマさん」のモデルになっている。国立を舞台に撮影された山口瞳原作、高倉健主演の映画「居酒屋兆治」には、居酒屋のシーンにエキストラで出演した。
石井めぐみ
女優。都立国立高校卒。ほかにエッセイスト、ファイナンシャルプランナー、フォトグラファー、美容アドバイザー、株式会社ウィメンズ・ラボ取締役COOなども。J:COMにて「石井めぐみのステキに多摩めぐりん」に出演中。
石井
普段は、実習で特に国立の野菜を使うということはないそうですが、今回は特別に使っていただきました。楽しみです。市長、最近農業は、後継者不足とか色々な問題があって、難しいと言われていますが、国立の場合はどうなのでしょう?
佐藤
国立も結構難しいです。今言われましたように、後継者問題が一番にあるのと、都会にある農地ということで都市農業の宿命と言いますか、農地のスプロール化が著しく進んでいます。
石井
市としてできること、対策というのはどういうものがありますか。
佐藤
やはり農業を営むためには、光と風と水。これがどうしても必要です。スプロール化した農地においては、その条件が全部満たされないといけません。そのための一つとして、農地を集約型で一カ所に集めるという方法があります。
石井
条件のいいところにするということですね。
佐藤
そう。今言った3つの条件を満たすような場所をセットしなければいけないということが、大きな課題として残っています。
石井
国立の中にはそういった場所はあるのでしょうか?
佐藤
あるのですが、ごく限られた地域になっています。今ある農地を換地しなければいけないということなので、個人の権利がかなり絡みますから、非常に難しい作業にはなると思います。
石井
でも今日用意していただいたような、こんな立派なお野菜が採れるわけですから、国立でも、もっともっと農業を発展させていただきたいですね。
佐藤
やっぱり目で見て確認して、安心安全なものを口にするという食の大原則を考えると、これからの農地は市民にとっては一番大きな問題かなとも思います。
石井
ということは、そもそも農地を守るというのも、市としての大きな役割になっていくということですよね。
佐藤
農地を守ることが、農家の生業を守ることも含めて、75,000の市民の安全安心の食を守るということにつながります。ただ農業という、そこだけでくくりたくないという感じです。
石井
私の知り合いの方たちが、今、国立で、農業をがんばっていらっしゃいます。こういう方たちを何とか支えていく、そんなサービスがあったらいいな、と思うのですが。
佐藤
その通りだと思います。農地を守るのが農家の方だけではなくて、農業に関心を持つ人たち全員で関わっていただきたい。そのシステムづくりはやっぱり行政がしなきゃいけない、と思います。
石井
あとはつくったものをどのように世に出していくか。まちの中に出していくか。この部分は、行政が関われる一番大きな点じゃないかと思うのですが。
佐藤
そうですね。市場に出すとか、大消費地が近くにあるとか、つまり都市農業といえばそういうことを言われてきましたが、直接、国立市民の口に運べるような交流をぜひ実現したいと思います。
大塚(サービス班の学生)
本日のパンですが、フォカッチャとグリッシーニとなっています。
石井
おいしそうですねえ。こちらで焼いているのですか?
大塚
はい、こちらでつくっております。
石井
(一口食べて)おいしいですねえ。市長は、こちらで時々パンやお菓子を売っていらっしゃるのをご存知ですか?
佐藤
僕はケーキをよく買います。孫のためなのですが。
石井
おいしいですよね。人気があるのは結構早い時間に行かないとなくなってしまいますよね。
佐藤
ところで、石井さんも、農業や食にはかなりこだわりがあるのですか?
石井
あります。そもそもは、自分自身が食べることがとても好きなので、食の問題には興味を持っていました。だんだん興味が深くなって、今は、私自身もやっぱり気になるのは農業の問題です。日本では自給率が下がっていますよね。誰かがやらなくちゃいけない問題ですが、誰かやる人が出てきたときに、それを私たちが支えなければいけないと思っています。その力がなかったら若い人たちは出ていけないし、そういうことをやる上でも国立って、とてもいい地域だと思います。自然がたくさん残っているところがあって、水がきれいですよね。そういう場所があるので、何とか国立から若い農家の人たちの芽を育てていきたいと思っています。