きょうやのうどん
国立市内でおいしい一品料理とそば、といえばここと定評の「手打ちそばきょうや」が2025年5月19日に閉店。そのわずか1週間後、5月27日に新たに「きょうやのうどん」として開店しました。
店舗は変わらず、JR南武線谷保駅北口から歩いてすぐ、富士見台第一団地交差点南東にあります。
――そばとうどんは一緒に扱っているお店も多いですし、同じ麺でもあるので、私たちもつい「そばうどん」とひとくくりに言ってしまいます。でも考えてみれば、麺としてもつゆとしても、まったく別ものですよね?
「そうなんですよ。うどん屋でいこうと決めた自分自身が驚くほど違いました。けれども、うどんへの取り組みもやればやるほど本当におもしろくて、改めていい勉強になりました」(店主・中村直樹さん)
――おいしい小料理でお酒をいただいて、〆においしいそば、を楽しんできたファンも大勢いらっしゃったでしょう。残念に思われているのでは?
「おかげさまで21年と半年、ここでそんなふうに可愛がっていただきました。でも、それをうどんでもできないものかと考えているのですよ」
――うどん屋でちょいと一杯、〆にうどんですか?
「ができればいいな、と。だから季節の一品料理もお酒もご用意しています」
「ちょっと思うところがあって」(中村さん)、ここから徒歩5分ほどの自宅で手打ちそば屋をやろうという計画が動き始めたのが2年ほど前のこと。8月開店を目指して準備が進んでいます。
「あちらの計画が先にあって、当初はここを閉じるつもりでいました。けれども、長年一緒に仕事をし、盛り上げてきてくれたスタッフたちのことを思うと、やめてしまうのも申し訳ない、古民家風のしつらえなども壊してしまうのはもったいないと、新たな道を模索しました。すぐ近所で同じそば屋をやるのは、いかがなものかということもあってうどん屋となりました」
「そう決めてからは都内、京都、大阪、香川などなど、あちこち食べ歩きました。讃岐うどんに近いのですが、黄色味がかったオーストラリア産の上質な粉を使って機械打ちしています。出汁は焼きあご、本枯節、いりこ、昆布と薄口しょうゆを使います。自分なりの麺、出汁にたどりつけたかなと思います」
澄んだお出汁は、ほどよい歯ごたえとのどごしのうどんに寄り添って、至福の味。うどんは麺だけで食べても、かむほどにうま味が伝わってきます。
器は全て新しくなりました。近隣の陶芸家の手によるものです。
天ぷらは揚げたてが供され、一品料理たちは旬の素材を用いて、季節の味が楽しめます。
「仕入れは府中の卸売りセンターから。前日に頼んでおくと目利きが豊洲市場で仕入れてくれるので、安心・信頼の仕入れルートです」
そしてそして、ぜひとも試してほしいおすすめは、肉汁うどん。スライスされた藁焼き角煮がたっぷり入っています。筆者は普段は角煮が食べられないのですが、これは「うまい!」とうなりながら完食。ほどよいスモーキーさと、とろっとろに煮込まれた豚バラ肉が、臭みもくどさも感じさせず、上品に仕上がっています。うどんとのバランスもとてもよく、ひとひら添えられたゆず皮がいい仕事をしています。
季節感が、店外・店内のしつらえからも料理からも伝わってきます。うどんメニューも時季のスペシャルが出るので、都度都度味わいたいもの。
きょうやは、歩いて5分ほどの距離でそばとうどんそれぞれの専門店が、和食堂も変わらずに展開します。
きょうやのうどんも、きょうや食堂同様、いずれは中村さんなしでの運営になります。
「かれらの腕もいかしたいのでね。ちゃんとやってくれると思います」
築き上げてきたチームワーク、信頼関係あってこそですね。
2003年に脱サラして手打ちそばきょうやを開業、2014年にきょうや食堂、2025年5月にはきょうやのうどん、そして8月には移転先でそば屋を開業予定。と、11年ごとに新しい何かが起こる中村さん。「楽しいことだけをやっています」と、豪快に笑います。
ひと皿ひと皿に込められた中村さんの「おいしいものをゆったりとした雰囲気の中で味わっていただきたい」という食の原点、細やかな思いは、うどんを通しても確実に伝わってきます。
- 店舗所在地
- 国立市富士見台1-12-14
- 営業時間
- 月から金 11:30~14:00(L.O.)
土曜日 11:30~14:00(L.O.) 17:30~20:00(L.O.) - 休業日
- 日曜
- TEL
- 042-573-9755
- 店舗席数
- 28席
- 禁煙・喫煙
- 禁煙