ロージナ茶房
創業1954年。国立の街とともに歩み続ける老舗カフェ
国立駅南口から歩いて3分ほど。大学通りからブランコ通りに入るだけで静かな空気が流れます。開業は1954年5月。以来、ずっと国立の人々に愛され続けているのがロージナ茶房です。
開業時から今日まで変わることなく、学生たちでにぎわい、そのお腹を満たしています。
その一方で、画家でもあった創業者・伊藤接さんの人脈でしょうか、作家、芸術家、音楽家たちが集い交流する社交場・サロンとして、文化の薫りただよう街づくりの一翼を担ってきました。
店名の由来をたずねると、二代目・伊藤丈衛さんは「路地裏にあるから!」とひとこと。
開業時に一橋大学のロシア語の先生によって命名されたのですが、路地裏に語感が似ているロシア語の「ロージナ(故郷・祖国・大地の意)」を思いつかれたのかもしれませんね。
青い扉を開けて入ると、「お好きな席へどうぞ」の声がかかります。120席もあるのだから、効率よくサービスするのに都合のよいように誘導されるのかと思いきや…この自由さにホッとしたりうれしくなったり。常連さんの中にはご自身の指定席がおありの方もいらっしゃる様子です。
開店当時は1階だけだったそうで、地下と2階はのちに増築。地下は個室のように使えるからグループの人々に、1階は隠れ家のような、2階は窓越しの外光が気持ちよく…と、それぞれに趣きが異なります。
マダムたちの茶話会、ご高齢カップルのランチ、ひとり静かにコーヒーを嗜む…といった幅広い客層を受け入れる懐の深さを感じさせますね。
店内はさながらギャラリー。あふれんばかりに絵画が並んでいます。
創業者の伊藤接さんは、画家でもあり、骨董や音楽にも造詣が深く、国立ゆかりの文化人との交流もあり、国立のキーパーソンのひとりとして慕われていました。その交流からたくさんの作品が集まってきたようで、それらが惜しみなく展示されているさまは圧巻。
それを支えてきたのは接さんの奥さま。数年前まで、接客もされていました。
「なにしろ豪快な母でね。この店ができたのも母のおかげ」と丈衛さん。「何をしても許されたけど、服の色の組み合わせが気に入らないと強いダメ出しが出た」と、色の好みがはっきりしていて「この梁なんかも銀色に塗っちゃうの」などなど面白エピソードがザクザク。それはまたいずれの機会に。
山口瞳さん、接さんの絵もありました。
すいている時間帯なら、店内の絵を鑑賞するのも楽しいかもしれないですね。
学生たちに便利なインフォメーションも貼りだされていますよ。
メニューにはモーニングサービスからア・ラ・カルト、お酒やおつまみもあります。
メニューの種類は「200!」と、丈衛さんは即答してくれました。
一橋大学で新入生泣かせの伝説があるザイカレーがつとに有名だけれども、丈衛さんのおすすめは、数種類の魚介類、ぷりぷりの牡蛎まで入っているマイルドな辛さのシーフードカレー。ちょっと甘めの昔風ナポリタン。苦みの立ったカラメルソースがアクセントのプリンは、卵の生臭さを感じさせないコクのある味わい。
もちろんボリュームたっぷりですが、案外スルスルとお腹に入って、気がつけば完食。
ま、無理はなさらず。
コーヒーは「企業秘密のブレンド」と笑う丈衛さん。数種類の豆をブレンドした、モカが強めに感じられる創業時から変わらない味。
丈衛さんは内装もメニューも「少しずつ変わっているよ。時代に取り残されないようにね」と言います。
けれども、ロージナ茶房の根底に流れる揺るぎないおおらかさは、古くからのお客さまはもちろん、初めて訪れる者にさえ郷愁にも似た想いを抱かせてくれます。
変わらぬ風情で温かく迎え入れてくれる姿は、まさに「ロージナ」ですね。
- 店舗所在地
- 国立市中1-9-42
- 営業時間
- 9時~23時(コロナ緊急事態宣言発令中は20時閉店。自治体から発表される方針により営業時間の変更あり)
- 休業日
- 毎年1月1日
- TEL
- 042-575-4074