ダイマツ
JR南武線矢川駅北口ロータリーから、西側に見える“矢川メルカード”のゲートを進みます。突き当たりを少し左に折れた先に新鮮野菜の「ダイマツ」、鮮魚の「魚善」、精肉の「東京ブロミート」と、生鮮品専門の看板が。意外や意外、この3つの生鮮専門店が長屋風にまとまって並んでいるのは、全国でも珍しいのだそうです。
1970年代前半の同時期に開店して半世紀。その奥に広がる団地・都営国立富士見台4丁目アパート(旧・矢川北アパート)とともに歩んできました。
こちらは新鮮野菜・果物を扱うダイマツさんです。
初代店主・日原重隆さんの叔父さんも新宿で青果物店を営んでいて、叔父さんのご実家に大きな松の木があり、この松のように根を張って大きくなるようにとの願いを込めて「大松」を屋号にされたそうです。「昭和49年に父がここに店を開くとき、のれん分けのようにその名をもらって店名としました」と、二代目の日原和重さん。
かつては団地の賑わいでお店もフル回転でしたが、やがて近所にスーパーができ、団地住民の高齢化が進んで家族構成が変わり、空室が目立つ…など、時代の流れとは言え、苦戦を強いられる時期もありました。
「価格の点ではスーパーにはかないません。うちは価格競争には走らず、品質の良さでやっていこうと。食べて絶対おいしいものを仕入れて、自信をもって販売するという姿勢は父の代から変わっていません」
仕入れは毎日市場から。
「産直ものだと、どうしても地域により、時季により入荷するものに偏りが出てしまう。市場なら品質的にも種類・量的にも安定していますから。旬のものはもちろんですが、ご家庭で日々使いたい野菜やくだものがあるでしょう?そういったものは揃えておきたいのでね」
日原さんの青果物を見る確かな目は、先代からの教えと、日々通う市場で養われてきたに違い位ありません。
経営の安定化を図るために新たな販路として保育園や老人ホーム、食堂などへの納入に軸足を置くという方向転換もしました。
「だからといって店売りもおろそかにはしていませんよ。顔を見て言葉を交わして、安心して買いものをしてもらえる、気軽に立ち寄ってもらえる八百屋でいたいですからね」
店頭には、青果物のほかにもお豆腐やお菓子まで、さまざまなものが並びます。夏場はぬか漬け、冬場は白菜漬けとたくあんが定番の自家製漬物は、昔から変わらない人気商品。お菓子まで置いているのは「ご高齢の方はお茶の時間が楽しみだし、ちょっとしたお茶請けがほしいでしょうから」の言葉に、お客さまの日々の暮らしに思いを巡らせ、寄り添うやさしさを感じますね。
日原さんは矢川メルカード商店会長も務めています。
お店の目の前にある「くにたち未来共創拠点 矢川プラス」です。保育園は先行してすでに開園していて、全体の本格稼働は2023年4月から。
「あらゆる世代に対応する機能を持つみんなの居場所になり得る施設なので、多くの人が集い、新しい人の流れができれば、矢川の街、そして商店街の活性化につながるのでは。われわれも手をこまぬいていないで、協働していきます。まずは3月末に、完成記念イベントを市と協力して開催します」
建物の老朽化、住民の高齢化で、人口減少が進んでいる団地についても「順次建て替え工事が進んでいて、全棟完成は5年後。若いファミリー層が入居して、かつてのような賑わいが戻ってくれるといいですね」と、期待を込めて見守っています。
また、「コロナ禍で中止していた毎夏恒例の商店街イベント“矢川まつり サマーデイズナイト”も今年、復活。東京女子体育大学の学生さんも参加してくれます。大学と地域のつながりができているのもうれしいことです」
「矢川の街を巡るマップの制作、駅前の花壇をはじめとする美化など、すでに実施していること、新たに企画すること、細やかな工夫などなど、人々が安心して集える仕掛けを作っていきます。各店が専門店で、その集合体が商店街ですから、みんなで力を合わせてより一層魅力ある街にしていきますよ」と意気込みを聞かせてくれました。
ドラマなどのロケ地としてもたびたび使われている昭和レトロな商店街。その空気感は見た目だけでなく、昔から大切にしてきたお客さまとの会話や心配りといった目には見えないぬくもり感も一体となって醸し出しされているのでしょう。
お店のみなさんの思いと、間もなくオープンする街の新拠点が生み出す、新生矢川が楽しみです。
- 店舗所在地
- 国立市富士見台4-23-7
- 営業時間
- 10時~20時(月・水は19時30分)
- 休業日
- 毎週日曜 第1・3金曜、土曜
- TEL
- 042-576-0800