ギャラリー茶房 頑亭文庫
「頑亭文庫」は、2020年に101歳でお亡くなりになった彫刻家、画家、書家として活躍された芸術家 關頑亭さんのアトリエだった場所です。2023年6月1日にギャラリー茶房としてオープンしました。
まずは入り口へと続く庭の美しさに目を引かれます。駐車場の美しい恵那御影土留めに、鉄平石を敷いたアプローチには蹲(つくばい)が置かれ、気持ちが清められるように感じます。信楽の壺の中のメダカが泳いでいる姿に癒されます。庭の奥から密やかに鬼瓦が不届きものに目を凝らしているようです。
昭和30年代に大学通りに設置されていた、まさに元祖アートビエンナーレとでもいうべき貴重な彫刻。今は頑亭文庫の庭の番人として、お客様をお迎えしています。
室内に入ると、思わず上を見上げてしまうほど天井が高く、太い丸太の梁に圧倒されます。キャットウォークのような作業場は弘法大師座像など大きな作品の制作の作業のためと思われます。この場で数々の作品が生み出されていたかと思うと、背筋の伸びる思いですが、天然の素材を使用した内装と家具が温かみがあり、とても落ち着く居心地のよい空間です。
地元の人々に「頑亭さん」と呼ばれ、親しまれ、愛された人柄そのままの雰囲気の空間です。
アトリエには彫刻や絵画用の道具が多く、片づけているとご本人の作品はもちろん、仕事に使った道具類、親交のあった方々の作品も多く保管されていたそうです。
大正8年に谷保村で生まれ育った頑亭さんは、地元の人との交流も多く、作品を仕舞い込んでおくよりも、多くの方に見ていただき、またゆかりの方々があつまり、思い出話をできるような場所にできたら。そんなご家族の思いで、このギャラリー茶房を2年ほどかけ準備してきました。
室内のいたるところに、ご本人の作品だけでなく、愛用していた彫刻の道具や絵具を展示。また親交のあった方々の作品も展示されています。多摩エリアで活躍された芸術家や文化人の作品をさらりと紹介してくださったのは、息子の關純さん。今後は季節によって展示を入れ替えていくそうです。
室内は無垢材の床はそのままに、屋久杉の一枚板をテーブルに。アトリエに眠っていた素材を家具として利活用し、センスの良い落ち着きのある空間を演出しています。
にこやかにお客さんと談笑する佐喜子さんは、
「ここはゆるりとしたカフェですから、ゆっくりとお過ごしいただければ」
と。また、ご高齢の方も気軽に来られるようにと、靴を脱がずに室内に入れる心使いもされています。
直木賞作家の山口瞳さんの直筆原稿「頑亭さん」も期間限定で飾られています。一緒にスケッチ旅行に行くなど交流があり、作品の中にも「ドスト氏」として登場し、読者にもおなじみの存在でした。
読書家でもあった頑亭さん。書棚には愛読書とゆかりの方々の書籍がズラリと並びます。ご友人の山口瞳、山口正介、嵐山光三郎、向田邦子、常盤新平と親交のあった作家の作品とともに、仏教にまつわるものや写真集、画集、「多摩のあゆみ」など国立の歴史にまつわる資料も数多くあり、貴重な書架です。
一冊の小説を書棚から取り出し、そっと本の扉を開くと、なんとも愛らしいエクスリブリスが現れます。嵐山光三郎さんのデザインだそうです。蔵書1冊1冊を大切にしていたことが伝わってきます。
書棚の奥のおひとりさま専用の席もあります。ここでのんびり読書しながら「頑亭珈琲」をいただけるとは、なんとも至福の時間を過ごせますね。
「ここはお庭と空間がごちそうなんですよ」
と謙遜される潤子夫人ですが、せっかく来てくださった方々をおもてなししたい、と準備されているのはこだわりの「ちまき」。具だくさんでジューシーな豚の角煮入りのこだわりの美味しさです。滋味深い豚汁とともにいただけます。
各種ドリンクは、頑亭珈琲、文庫煎茶、いわてりんごジュース、愛媛みかんジュース等。夕方の一杯には、KUNITACHI BREWERY−くにぶる−のクラフトビール「1926」やウイスキーも。
「はくほう紅茶」は、お母さまの帽子デザイナー関民さんが、最初にオープンしたお店「白鳳」からつけられた名前だそうです。ティータイムに、シフォンケーキとごいっしょにどうぞ。
ギャラリー茶房となったアトリエと作品を拝見し、改めて頑亭さんの交流の広さと、多くの方から愛されていたことを実感します。国立の奇跡のような時代。頑亭さんとゆかりの方々との思い出を知り、語りあい、令和そして次の世代へと伝えていく。「頑亭文庫」がまさにそんな場になりそうです。
- 店舗所在地
- 国立市中2-2-1
- 営業時間
- 11:00~18:00
- 休業日
- 月・火
- TEL
- 042-577-0707