THE MIDFLOW coffee roast ザ・ミッドフロー

THE MIDFLOW coffee roastは自家焙煎コーヒー店。豆売りとイートイン、テイクアウトができます。

国立駅南口から歩いて8分ほど。富士見通りと一橋大学西側の道が交差する、六差路南西側にあります。外観、内装ともにシンプルで清楚なたたずまい。

2022年7月30日にオープンしました。

 

こぢんまりとした店内は白が基調。思いのほか高い天井が、7坪強とは思えない、ゆったりとした空間と落ち着いた雰囲気を生み出しています。

 

客席はカウンター4席とベンチのみ。気軽に立ち寄れるコーヒースタンドのような雰囲気です。

 

コーヒーの8割はベトナム産で、浅煎りから中深煎りで準備されています。

ベトナムは歴史的背景から、フランスの影響を強く受けてきたために、コーヒー栽培が重要な産業のひとつで、コーヒー文化にも歴史があります。

そしてコーヒーの生産量も、今やブラジルに次いで世界第2位。

 

ベトナム産ロブスタ種は、従来は、病気に強い大量生産に適した特性からインスタントコーヒーや缶コーヒーに多く使われてきました。

そのロブスタ種をシングルオリジンで楽しめる「ファインロブスタ=スペシャルティ」のレベルにまで進化させた生産者トイ・グエンさんとの出会いが、店主・益岡悠介さんのコーヒーへの熱意をより一層かきたてました。

「2019年にベトナムのトイさんのフューチャー・コーヒー・ファームを訪ねました。樹上で完熟したコーヒーチェリーを一粒一粒手摘みで収穫し、果肉ごと嫌気性発酵させています。その精製技術は卓越していて、ここのコーヒー豆にすっかり魅了されました。開業前にベトナムのコーヒー研究所兼教育機関での研修に参加しました。トイさんの農園には繰り返し足を運んでいます」

 

焙煎機もベトナム製のOPP coffee roasterを使っています。

「釜が厚くて蓄熱性に優れているので、うちの看板豆である肉厚が特徴のファインロブスタにも芯から火を入れることができ、その長所を引き出すことができます。天候、気温や湿度、豆自体の水分量などといった焙煎に関わる多くの変数に対峙する焙煎士の思いや努力に応えてくれるマシンです」

焙煎機メーカーのフィさんとも友人として強い絆が結ばれています。トイさん、フィさんとの信頼関係があってこそのTHE MIDFLOW coffee roastと語る益岡さんです。

 

そうそう、気になっていたのです。店名のMIDFLOW の意味は？

「川や時間の流れの途中という意味です。コーヒー豆が農園で育まれ、いくつもの過程を経てお客さまの手もとに届きます。私もその流れの途中に身をおく者という意味でのネーミングです。生産者の思いをコーヒーにのせてお客さまにお渡しするという気持ちを込めました。国立はそんな私の思いを受け止めてくれる土壌があるように感じています」

ここは便利な立地とは言い難いのですが、「一度にたくさんのお客さまを“さばく”ような、流れ作業みたいなことはしたくありません。できる限り丁寧な対応をしたいのです」という思いを形にするには、むしろ「ここがよかった、ここでよかった」のです。

「多少の不便は承知の上で繰り返しお越しくださる常連さんが増えていることが、誇りでもあり、喜びでもあります」。

 

丁寧にドリップされたコーヒーは、益岡さんの出身地岡山県の備前焼で供されます。緋襷がおしゃれですね。

 

そして、コーヒーのお供の焼き菓子は益岡夫人hanaさんの手によるもの。

米粉、グラスフェッドバター、甜菜糖が主材料。お子さんにも、近ごろ増えている小麦アレルギーの方にも安心して食べていただくことができます。

「近隣の幼稚園や小学校の保護者の方が立ち寄ってくださり、お子さんにも安心なお菓子として喜んでいただいています。ときにはお子さんが買いに来てくださるのもうれしいですね。ちびっこさんたちも大歓迎です」

 

焙煎豆はベトナム料理店にも卸しています。

「ベトナムの人々は故郷愛、ネットワークが強いので、ベトナム人同士の評判をきっかけにTHE MIDFLOWを知って、レストランでべトナム豆を使ってくださるお店もあるんです」。

 

「ロブスタ種の焙煎は難しいのですが、ロブスタの本場であるベトナムのコーヒースペシャリストからの意見やアドバイスをもらいながら、僕自身、日々試行錯誤を重ねて丁寧に作り込んでいます。おいしいコーヒーを追求することで、またそれを楽しんでいただけることで、私たちもお客さまも人生そのものを豊かにしていくアイテムになるのではないかと考えています」。

 

なにごとにも真摯に向き合う益岡さん。一杯のコーヒーがお客さまの日々の暮らしに豊かさを添えられたら、との願いを込めて、今日もコーヒー焙煎にいそしみます。

 

ライター：小山信子