手打ちそばきょうや
国立の南側・谷保ののどかな商店街の一角にひっそり佇む、手打ちそばのお店「きょうや」。
緑にかこまれた古民家風の店内は、まるで文豪や文化人が集う社交場のような風情があり、ひとりの時間、家族や友人との時間、恋人とのデートの時間を、それぞれ心地よく包み込んでくれます。
定番の手打ち蕎麦と天ぷらのセットもさることながら、その時手に入る旬の食材で作られた一品料理とお酒でしっぽりというのも「きょうや」ならではの過ごしかた。
「谷保の都会と田舎の中間のようなゆったりとした感じに惹かれて、2003年にここに店を構えました」
と話すのは、店主の中村直樹さん。脱サラしてお店を構えたのは35歳の頃のことでした。
「創業当初から、うちの店では普通のことを普通にやり続けてきました。出汁に使っている鰹節も削られた状態のものを買ってくるのではなく、店で作った削りたての鰹節を使います。そうやってとった出汁で、お客さんに蕎麦や煮物を作ってお出しすると、『すごく美味しい!』と喜んでくださって」
「どうやって作ったんですか?」と尋ねるお客さんに、「いや、本当に普通のことをしているだけですよ」なんて会話をすることもあるそうです。
和食の世界では、普通のことほど時間がかかり、手間がかかります。そうした時間や手間をカットして店としての利益を追求するのではなく、「あたりまえのこと」として大切にし続けるのが、中村さんのポリシーです。
「昆布と鰹節で毎日出汁をとって、蕎麦は毎日石臼で挽いて手打ちして、お米も契約農家からとっているものを羽釜で炊いて、毎日魚や野菜の仕入れに行って、味噌やぬか漬け、小鉢も全て手作りをして。大変なことはありません、もともと日本人がやっていたことを、自分もやっているだけですから」
きょうやの蕎麦は、全国の産地から最も旬な蕎麦を仕入れ、つるりとのどごしのいい8.5割そばに仕上げています。
だしに使う鰹節は本枯れ節を使い、わさびも伊豆から取り寄せたものを使うなど、食材として取り入れるものは、中村さんが本当に気に入った国産素材のみ。
「美味しいものには細部まで意味とストーリーがあります。そういうものを好きだと言って来てくださる人が多いのは嬉しいですね」
谷保の隠れ家のような「きょうや」を訪れる人は、たまたま通りかかって店を見つける人はほとんどおらず、多くが口コミやリピーター。ここを目的に「また来たい」「谷保でいい時間を過ごしたい」と思ってくれる人を増やすべく、今日もあたりまえのことを続けています。
- 店舗所在地
- 東京都国立市富士見台1-12-14
- 営業時間
- 11:00〜14:00 17:30〜20:00
- 休業日
- 火水
- TEL
- 042-573-9755
- ウェブサイト
- https://www.kyouya-yaho.com/