炭火焙煎珈琲 桜乃
開業は1990年代。棚にずらりと並んだカップから好みのものを選んでコーヒーがいただけるお店。と言えば、市内の方なら、ああ知っている、聞いたことがある、という方も多いはず。
店名には炭火焙煎珈琲とありますが、紅茶や抹茶もあります。手作りお菓子とともにやすらぎのティータイムはいかが。
その炭火焙煎珈琲 桜乃は、国立市内を東西に走るさくら通りの中ほどにあり、黒塗りの京風建物が落ち着いた風情を醸しています。
入り口へのアプローチには蹲踞(つくばい)や石灯籠が配されていて、お茶席への誘いのようですよ。
8mもの一枚板のカウンターは圧巻。板の手前部分をくりぬいて琉球畳が組み込まれています。畳を組み込んだのは、「畳って、気持ちを落ち着かせてくれるでしょう。手やひじが触れたときにもやさしいから」。
上からは、ひとつひとつデザインの違う明治・大正時代のランプシェードが下がっています。
「お好きなシェードの下でお好きなカップでお好きなコーヒーを飲んでいただきたいんです。ここでは好きなものに包まれてゆったり過ごしてほしいから。コーヒーが苦手な方には、紅茶、抹茶をお出ししますよ」と、マスター。
客席はカウンター13席、テーブル席が2卓あります(コロナ禍にある現在は、ソーシャルディスタンスに配慮して、一席ずつあけてご利用いただいています)。
さりげなく配され、ごくごく普通に使われている明治時代の和家具や茶釜。カウンター奥の壁面を彩るのは壁紙ではなく帯地…と、見ているだけで心が弾むしつらえです。
素敵なアンティークたちに囲まれたこの空間を「古いものたちに働いてもらっている」と、マスターはさらりと語ります。
良質なものに遊び心も付加しながらさりげなく提供という、茶の湯にも通じる思いやり、おもてなしは、外装・内装にとどまらず桜乃のありようそのもののように感じられます。
コーヒーをいただくなら、早速カップを選びましょうか。アンティークあり、陶器あり…ひとつひとつ趣きの異なる銘品が「100種類ぐらいはあるかなぁ」(マスター)。
迷っていると、すかさず「好きな色、形は?」「たっぷり飲みたかったら大きいものがいいのでは?」など、思わずクスリとしてしまう声掛けで助け舟。
コーヒーは、日本で最初に炭火焙煎を行ったという神戸の老舗、萩原珈琲(創業1928年)の豆を使用。
香りとコクがある深煎り、マイルド、酸味が強すぎない浅煎りなどストレート6種類とブレンドがあり、「お好みを言ってくだされば、応じたブレンドもしますよ」。
注文ごとに豆を挽き、1杯あたり18gとたっぷり使います。ていねいなハンドドリップで雑味のないクリアなコーヒーが抽出されます。
キャッチフレーズは「お茶とお菓子でおもてなし」。
もちろん飲み物だけのオーダーもOK(各600円)。
でも、ここはひとつ「お供にマスター手作りのお菓子」の誘惑に乗ってみるのがおすすめですよ。
コーヒーセットは折敷に載せて供されます。
お菓子メニューは季節ごとに変化しながら、つねに数種類が用意されています。
注文すると目の前でささっと仕上げてくれるのですが、マスターならではの“魔法をちょこっと”がかけられて…。
たとえば写真のチョコレートケーキ。そのまま食べてももちろんおいしいチョコレート味。今日は深煎りコーヒー豆が一粒添えられていて、一緒に食べるとモカケーキ風味に変身。
ほかにもカステラにバターを添えてちょっと焼いてみたり、ホイップクリームを添えたら、あんを添えたらetc.etc.と、バリエーションがどんどん広がっていくようですよ。
抹茶セットは半月盆で供されます。そっと置かれたあしらいがおしゃれですね。
練り切りは季節感と彩りが楽しみです。
数多あるレパートリーの中でも人気ナンバーワンは、定番の白玉団子。ゆでたてのぬくもりと、やさしい舌ざわり、甘じょっぱいみたらしあんはコーヒーにも抹茶にもマッチします。
夏季におすすめなのがアイスコーヒーやアイスカフェ・オ・レ。グラスに浮かぶのは普通の氷ではなく、コーヒー液やミルクを凍らせた氷。最後までコーヒーが薄まらず、ミルク味が濃くなっていったりして、味の変化が楽しめますね。
絶妙なタイミングでひとつずつ順に供される気取りのないおやつたち。日々のくつろぎタイムや、お散歩やサイクリングの休憩・エネルギー補給にもおすすめですよ。お試しあれ。
そしてそして、なによりのおもてなしは、飾らない人柄のマスターの粋なはからいと会話。豊かな経験に裏付けられた話題の引き出しの多さ・深さに、時の経つのも忘れそう。
非日常の贅沢空間を存分に味わい、目も口もお腹も心も満たされて、お店をあとにします。ごちそうさまでした。
- 店舗所在地
- 国立市富士見台3-5-1
- 営業時間
- 10時30分~18時30分
- 休業日
- 水曜定休(不定休あり)
- TEL
- 042-577-7272
- 店舗席数
- カウンター13席 テーブル席2卓(コロナ禍にある現在は、1席ずつあけてご利用いただいています)
- ウェブサイト
- https://ameblo.jp/asitaniwajyo/